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オミクロン変異株にも有効な治療用アルパカ抗体(続報)— マウス実験で現行薬への優位性を確認

2023年3月2日

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株式会社COGNANO(コグナノ)、高折晃史 京都大学医学研究科教授、保富康宏 医薬基盤・健康・栄養研究所センター長らの研究チームは、横浜市立大学、東京大学との共同研究により、新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」である「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」を含む変異株に対して高い中和活性を示すナノボディ(VHH)抗体であるP17およびP86を三量体化し、さらに活性を向上させたTP17およびTP86抗体を創出しました。さらに、ウイルス受容体であるACE2を発現する遺伝子改変マウスに致死量のオミクロン株を感染させたうえ、二種類のナノボディ抗体カクテルを経気道的に一回投与することで、体重減少を抑制し生存期間を延長することを確認しました。以上の成果は新型コロナウイルス感染後でも経気道投与により治療効果が得られ、さらにウイルス曝露後に重症化予防として投与できる可能性を示しています。

本研究成果は、2022年11月26日に、英国科学雑誌「Communications Medicine」にオンライン掲載されました。

COGNANOバイオチーム

1. 背景

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し3年が経過しましたが、RNAウイルスの特徴である激しい遺伝子変異を繰り返し、収束する見込みは立っていません。ワクチン等の効果もあり健康人の重症化率は減少している一方、高齢者や有病者の死亡数はむしろ増加したとも言われています。ワクチンは公衆衛生的な視点で重要である一方、治療薬は継続して必要とされており、変異に耐えうる創薬が求められています。COGNANO社ではアルパカにつくらせた莫大な数の抗体情報の中から、特に変異に耐性を持つと期待できるナノボディを開発し、京大病院内のウイルス実験施設に効果検証を依頼した結果、試験管内でオミクロン株に有効であることを実証できたため2022年7月に合同で論文発表を行いました。引き続き、これらの抗体が動物においてウイルス感染を抑制するかを確認するため、医薬基盤研に研究を依頼していました。

2. 研究手法・成果

株式会社COGNANO( https://www.cognano.co.jp/ )がデザインし供給したナノボディは、試験管内ではオミクロン株を含む全ての変異株に対して、承認されている治療用抗体製剤よりも有効でしたが、さらに効果を高めるために3分子のナノボディをタンデムで連結した3量体を製造しさらに効果向上を狙いました。3量体がより高いウイルス中和活性を持つことは京都大学病院のウイルス実験施設において再確認されました。医薬基盤研で開発されたACE発現マウスに対し致死量のオミクロン株ウイルスを感染させた上、3量体ナノボディ(TP17, TP86)を経気道的に投与したところ、体重減少の抑制および生存日数の延長が有意に確認されました。これは感染後の治療効果(重症化抑制)を示唆しています。

論文タイトル
Intratracheal trimerized nanobody cocktail administration suppresses weight loss and prolongs survival of SARS-CoV-2 infected mice
論文URL

成果のポイント

COGNANO社は、ワクチン接種後に得られるアルパカから有用抗体の遺伝子プロファイルを大量に取得し、候補抗体を識別するプログラムによって、2020年秋には強力な抗体候補を選び出していました。抗体がウイルスの侵入分子であるSPIKEタンパク質のどの領域に結合するかは、大阪大学難波研、井上研の研究によって明らかにされてきました。これは、変異によってヒトの免疫を逃れるウイルスの弱点を知るために極めて有用な学術的知見です。

論文タイトル
A panel of nanobodies recognizing conserved hidden clefts of all SARS-CoV-2 spike variants including Omicron
論文URL
論文タイトル
Structural insights into the rational design of a nanobody that binds with high affinity to the SARS-CoV-2 spike variant
論文URL

その後、京都大学のウイルス実験、医薬基盤研の動物実験によって、COGNANO社の創薬プログラムの有効性が次々に確認されています。新型コロナウイルス感染による死亡者数は減少しておらず、重症化抑制のために創薬は必要であると考えられ、「変異に耐性を持つ創薬」への要求が高まっています。

動画解説

  • 京都大学、横浜市立大学、東京大学の共同研究チームは、候補抗体が、現在パンデミックの主流となっている「オミクロン株」を動物実験においても中和することを確認しました。この成果は国立研究開発法人日本医療研究開発機構のアカデミア助成( https://www.amed.go.jp/ )によるものです。
  • オミクロン株を代表例とする新型コロナウイルスは、遺伝子変異することにより、ワクチンで誘導された抗体や治療用製剤から逃避可能となります。本研究で創られた抗体は、これまでに報告されたいずれの抗体よりも高い有効性を示しました。
  • ナノボディ抗体は遺伝子工学による改変がしやすく、通常型抗体よりも安価に生産できます。本抗体は環境耐性が高く、全ての新型コロナウイルス変異株を検出できます。そのため、医学検査ばかりではなく下水環境中のウイルスの濃縮やモニタリングにも利用することができます。

3. 波及効果、今後の予定

今回開発に成功した創薬セオリーは、新型コロナばかりではなく、エイズ、インフルエンザなどのウイルス変異問題に対する一般的な数学的解決ロジックを示しています。COGNANO社は、大学などウイルス研究施設に依頼し、これらの実効性を確認していく方針です。

パンデミックで実証された創薬デザインの応用として、COGNANO社は分子標的マーカー未発見のガン(トリプルネガティブ乳がん、膵がん、胆管がん、甲状腺未分化がん、グリオブラストーマ、肉腫、肺小細胞がんなど)を解決するために、Machine Learning、および、バイオテクノロジーを支えるIT基盤技術やプロダクトを開発進行中です。また、ナノボディ抗体の優良な物性を利用し、環境水モニタリングや医学検査の開発を行っています。これらの事業も、バイオ情報リソースをITテックとして役立てて社会貢献する機会と捉えています。

COGNANOの事業は、公益財団法人・京都産業21「産学公の森」(https://www.ki21.jp/)、グリーンコア株式会社、およびヤマト科学HD株式会社(https://www.yamato-net.co.jp/)のご支援ご協力によるものです。

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